持ち家か賃貸かという記事を以前書いた。この記事は大雑把に言うと、持ち家と同額のお金を用いた投資とを比較したとき、期待リターンという視点でどちらが良いかを検討したものである。
しかしながら、この記事は2つの重要な点を考えていなかった。
- そもそも持ち家を検討する理由として、賃貸市場に自分の要望に合致する物件がないという理由があるだろう。例えば特定の学区に6LDKの物件がほしい、また2世帯住宅でキッチンを2つ作りたいなどという要望を賃貸市場が叶えられるとは限らない。
- 期待リターンだけを考えるのは片手落ちで、期待リスクをセットで考える必要がある。期待リターンが低くても期待リスクがより低ければ的確な投資対象と言える。厳密さを欠く説明であるが、たとえば米国債は期待リターンは米国株に劣るが投資対象となるのは、期待リスクが相対的に小さいためである。
2点目についてもう少し掘り下げてみる。再び厳密さを欠く説明であるが、一般に期待リターンは期待リスクによって定まる。不動産でいうと、物件Aのほうが物件Bより期待リスクが高いとすると、物件Aのほうが物件Bより期待リターンは高くなければ売れない。理想的な市場では、高いリターンを得るにはリスクを取らないといけないし、リスクを取りたくなければリターンを妥協する必要がある。
ところが、実際には市場は理想的(効率的)ではない。なぜなら、あなたは他の市場の参加者が知らない情報を持っているからだ。それは、あなた自身が、この街で、特定の条件の物件を求め、住み続ける予定であるという情報である。このインサイダー情報をもった投資家のあなたは、その条件にマッチした物件を作り上げ、実際には少ないリスクにも関わらず他の競合と合わせた家賃に設定し、賃借人のあなたに貸し出し高いリターンを稼ぎ出すことができる。
こう考えると、実は上の1点目も2点目の一部として説明できるように思える。すなわち、特殊な条件の物件は期待リスクが高いため、”インサイダー情報”の価値が非常に高くなり、通常の賃貸がビジネスとして成立しない、といえるといえるのではないか。
前回の記事ではローンの利率や税金等について議論したがそれは些末な話であり、この”インサイダー情報”の価値が持ち家と賃貸の本質ではないか? あなたはいかに市場が驚く情報=特殊で妥協できない条件を持っているか? 持っていれば持ち家が有利であろう。逆にあなたの家さがし条件が大多数の人の条件と変わらないならば、あなたは他の投資家よりさして有利になることはできず、持ち家と賃貸はほぼ同等となるだろう。
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